2018.11.02

住職備忘録

あさき夢みし

 加美乃素と言う整髪剤を愛用していた母。独特の薫りがする整髪剤であった記憶です。 母は何時もお風呂を頂くと真っ黒な髪に加美乃素の口を下にしてポトポトと滴を落としては櫛で何度も何度も掻き上げていた。鏡を見つめる母を裸電球の下、コタツの中で徐々に髪がピカピカになっていく様子をそれとはなく眺めていた。貧しい私達の家庭には気の利いた整髪剤やクリームはなかった。冬場の乾燥防止にメンソレータムがあった。母はメンソレをホンの少し指に付けて勢いよく引き延ばしては顔に満遍なく塗り加美乃素で髪を手入れしていた。ピカピカの顔と黒髪。母の思い出であります。

 昨夜、亡くなって5年になる母の夢を見ました。白の割烹着を着てピカピカの黒髪の母は私を見つめていました。元気な母に会うのはほんとに久し振りでした。懐かしさに申し訳なさがあったのか・・「お母さん、今私が元気でいられるのはお母さんが『今』生きていてくれるからです。お母さんは私の張り合いです、健康で長生きをして私のそばにいてね、頼みます。」と母に懇願をするのですが黙って私を眺めては視線をそらします。「良いさ、生きているだけ」私は夢の中でしたが徐々に夢らしい事に、残念ながら気が付き始めました。夢は良いものです。嫌な夢もありますし恐ろしい夢も見ます。幸福な夢もあります。会いたかった方に会えるのも夢です。先日の夢の続きは何時また見られるか・・長い年月には恩讐を越えて会いたい人がいっぱいいます。幸せと思います。

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