2020.07.13

住職備忘録

習字は語る

 

私が21歳の時、遅れながら習字教室に通い始めました。この頃は世間では稽古事がはやり私も文化教室や役所の公民館に通って楽しんでいました。一週間は殆どをお稽古事に費やして、ロクな練習もせずに教室や会場を訪れていました。飽き性な性格も上達を妨げていたように思います。お茶、お花、ピアノ、吹奏楽、習字、とりわけ吹奏楽は週に二度練習があり一週間のうち5日間夜はお寺をあけて好きな事をしておりました。下の習字は文化教室を訪れて先生から下されたお手本です。先生は努力と言う字を書かれて「これで良しと思ったら持ってきてください」と仰いました。教室には20人くらいの生徒さんがお見えでした。先生は誰にも顔を上げず、黙々と朱筆をもたれて添削したり、お手本を書いてお見えでした。一枚目の「努力」は先生のお手本です。

先生の文字を眺め、何度も似せて練習をするのですが上手くゆきません。字は生まれながらに上手な人もあれば、努力の上に上達する人もお見えです。練習するほどにその奥深さに興味を沸かせました。硯は高野山で頂いた逸品の「端渓硯」で墨を摺りじっくりとお手本を眺めます。墨は湛慶硯に摺られて梅ケ香漂う墨汁となり何度も繰り返して自分なりに、先生の手本に似て来たかな?と錯覚の思いで、意を決して先生の机へ正面に向かいました。

 うつむいた姿勢を変えず先生はなんと、朱筆でクルクルクルと赤丸を付けて下さいました。先生は「この作品は生涯大切にて眺めて下さい」と意味あり気な事を私に告げました。

 昭和51年10月9日と朱筆で書いてあります。この意味ありげな言葉は忘れられない言葉でありその後、亡父存命中は毎週水曜日に、欠かさずに通ったものです。先生が下した手本を不思議に保存しておりこの歳になり再び手習いを始めようと思い立ちました。45年前の先生のお手本の墨跡は、未だに強く私に「努力」を求めているように感じました。知り合いに習字の作品を見せたら、若い時は元気が良いな、との事でした。45年前の習字と先日の習字です。

 

 

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